○現場からの問題提起
小澤邦寿「地方衛生研究所の将来」『公衆衛生』第77巻第1号,2013年,48‐53頁.
保健所の検査機能が地方衛生研究所に集約されるようになり、公衆衛生行政にかかわる試験検査は地方衛生研究所が唯一の実施機関となっている。
地方衛生研究所は、地域と直接的なつながりが無いために、サポートしてくれる利害関係者やサポーターがいない。そのため、人事・財政当局からの行政改革圧力に抗う術がなく、「定員・予算削減の『草刈り場』になっている」。
その結果、危機的機能低下を来している地方衛生研究所がすでにあり、研究所間の格差も大きい。人員・予算・人材育成面で、地方衛生研究所としての機能を果たす基盤そのものが崩れてきている。
「大災害やパンデミックなどの非常時においては、対応能力に明瞭な格差が生じることも十分予想される。同じ国民であるのに、居住する自治体によって健康リスクに格差が生じるとなれば問題である」。
地方分権の流れではあるが、「健康危機管理の『ナショナル・ミニマム』を担保する」ために、一定水準を確保する必要がある。現在のように地方衛生研究所が地方自治体の裁量に100%任されていることは問題であり、近い将来何らかの対応が必要だ。
○地方衛生研究所の現状と課題
2010年7月20日に開催された厚生労働省の会議「第1回地域保健対策検討会」で配布された資料4
地方衛生研究所自身が調べた現状まとめ 資料はこちら
・職員数・予算が減少していることを明らかにしている
・人材・機器の確保が問題という意見もでている
○地方の公衆衛生行政の予算の変遷
・地方自治体予算の総額と衛生費の推移を比べると、
1980年代後半、増額傾向=このとき衛生費は増額されるのは遅かった
2000年以降、減額傾向に転じる=このとき衛生費は先んじて進んでいったことが分かる
・また、衛生費の落ち込み方は総額に比べて激しい
⇒ 公衆衛生行政は、金を出し渋られる分野だといえそうだ
データの出所:
地方財政調査研究会編『平成9年度版 地方財政統計年報』1997年,30頁.
地方財政調査研究会編『平成20年度版 地方財政統計年報』2008年,28頁.
2015.3.15