1994年、オウム真理教によっておこされた松本サリン事件の際、長野県の衛生研究所が原因物質検索に取り組み、県警に先んじてサリンと特定しました。
本来、事件については警察の守備範囲であり、行政機関が関与することはまずありません。しかし本事例は、県庁公害課から衛生研究所に対し出動指示がだされました。「被害が深刻且つ甚大で、原因物質の特定にめどがつかず」、「生活環境の保全上行政が関与せざるを得ない」として、衛生研究所も調査に参加し、長野県警に先んじてサリンを検出しました。このような毒物などの鑑定に技術・知識をもった県警より先んじ得た理由として、「夾雑物の多い環境試料から多成分の微量化学物質を同時に検索すると言う、“環境公害研究機関が行っている検査・分析手法”が威力を発揮」したのだと、考察されています。
また、分析に必要な情報や意見の収集は、多くの機関の協力で行われました。なかでも国立衛生試験所(現、国立医薬品食品衛生研究所)からは、サリン特定の過程やその後にも、性状、合成法、毒性、代謝、治療に関する文献等多くの情報が寄せられたそうです。それは以前、同研究所と国立衛生試験所では共同研究した人的繋がりがあり、そのおかげで深夜に及ぶ検索が可能になった、とあります。「改めてヒューマンネットワークの重要性が再認識」されたと記されています。
2012.9.13