消防研究センター新体制

 

20064

 

独立行政法人消防研究所を廃止、総務省消防庁消防大学校に消防研究センター設置

 組織=火災災害調査部、技術研究部、研究企画部  (参照 1

  

この統合・吸収で消防大学校の一部となり、独立機関ではないので事務部門は他で肩代わりされると考えると、消防研究センターの人員は技術系職員の数を表していると考えられます。その研究センターの人員は、『消研輯報』第60号によると「予算定員26人」となっています。(参照 2 

一方、独立行政法人であったときの研究員は約35人でした。(参照 3

 2006331日付で技術系職員は、2名が退職、8名が自治体消防局へ移り、計10名減となっています。(参照 4

 

参照:

 1 新組織の「沿革」

 2 消防研究センター『消研輯報』第602008年,162コマ目.

 3 「骨太の方針 スジ違い? 消防研究所まで廃止へ 『まず削減ありき』」『東京新聞』2005107日朝刊 

 4 人事異動=消防研究センター『消研輯報』第592006年,270-271コマ目.

 

 技術系職員についていえば、退職や他へ移った人が10名あって、独法人であった時と新組織の定員を差し引いた数がほぼ一致します。つまり、消防庁への統合・吸収にあたっては、技術系の人員は2/3になったと推測できます。組織として見た場合も、独立機関として戻ったのではなく消防大学校の一部として吸収されています。

  

人員5割減という厳しい方針の下で、消防機能の強化をいかに果たしたか、竹中平蔵総務大臣は、国会で消防研究所の統合・吸収について次のような内容の答弁をしています。

  

消防研究所の統合・吸収にあたっては、国家公務員の定員を厳しく抑制する必要があるというなか、事務管理部門の合理化を図り、研究スタッフの量、質を確保した。また、災害対応の強化を図るために、研究分野を重点化した。研究予算は独法と実質同程度確保し、これによって機能は落ちないようにする。さらに強化策としては、「消防技術政策室」という科学技術戦略の企画を行う組織を新たに消防庁に設置した。

  

参照:国会議事録 2006323

 164国会参議院総務委員会 - 7号における発言45番目および47番目、竹中平蔵総務大臣の発言

 

ここで大臣は、研究面に支障が出ないように配慮しているように言っていますが、上で見たように、実際は技術系職員の数は減らされたと考えられます。減らすから、研究するのは「選択と集中」で災害対応分野だけに限定せざるを得ないのです。その一方で、消防庁に科学技術戦略の企画を担う新しい組織をつくって、消防庁としては「強化」したとしています。

 

 消防研究所の国への統合・吸収とは、科学技術機関としての独立性を奪い、技術系職員は実質的に大きく減らされ、そのために対応分野は「必要とされる」危機管理に限定するというものでした。

 

地方衛生研究所と同様に、消防研究所のように、何かが起きて、それに対応する役割を担う科学技術は、何が必要になるのかはわかりません。ある程度幅広く構えて、余裕を持たせていないと、新しい事態に対応できないうえに、ぎりぎりに切り詰めていては応用力も育ちません。統合・吸収に当たっては、このような科学技術の特性について、全く考慮されなかったのでしょうか。国への統合・吸収にあたり5割削減の方針が打ち出されたことに対して、関係学会から要望がだされていますが、そのなかで日本建築学会は次のように主張しています。
「事故や災害は多種多様であり、危機管理機能の強化において、幅広い研究領域での多彩な人材の確保が不可欠と考えられます」。

  

消防研究所の消防庁への統合・吸収とは、組織の独立性を失い、技術系職員も元々少ない人員でやっていたのに、さらに追い打ちをかけて減員するものでした。一旦、独立行政法人となったからには、政治の論理や行政組織の論理だけで動くのであって、科学技術がどのようにして成立しているのか、全く考慮されないということが、消防研究所の経緯をみるとよく分かります。いえ、そもそも独立行政法人化自体が、政治の論理や行政組織の論理だけで動いているものだと言えます。科学技術は常にカヤの外です。

 

 

消防研究所、消防研究センターの『消研輯報』一覧はこちら

 2012年現在の体制はこちら

 201210月現在、職員数26

 2012年度予算額 4.5憶円

 

2016.1.22