思うこといろいろ

 

●2003年の地方独立行政法人法案の成立にあたり、衆議院で5項目、参議院で6項目の、法律施行にあたって配慮すべき附帯決議がおこなわれました。両者とも似た内容ですが、そのなかに、法人化にあたっては、雇用問題、労働条件に配慮するとともに、「関係職員団体又は関係労働組合と十分な意思疎通を行うこと」という1項があります。

 

附帯決議はこちら

 

大阪市では勤務労働条件に関して労使協議が行なわれています。しかし、附帯決議が求めているような、十分なものではないようです。

労使協議はこちら

 

法人化に異議を唱えたり、正当な権利を要求したりする人びとの声は、当局にはあまり届かず、社会的に一定の理解は得られたものの、どちらかといえば大阪で吹き荒れている公務員バッシングのなかにかき消されているように見えます。一般的には法人化問題は、公衆衛生の問題としてではなく、「改革に抵抗する勢力が問題だ、として捉えられているのかもしれません。

 

●また、2003年の第156回国会で、地方独立行政法人法案に関する審議の際、法人の認可を総務省が握ることについて、地方分権に逆行するのではないのか、との批判が衆参両院で出されています。

・国会審議は右のバナーから →「簡単検索」

期間=第156回 平成15年01年20日~平成15年07月28日

検索語=「地方独立行政法人法案」

 

63日、衆議院 総務委員会 17号で集中審議、発言143番から260番まで

分権に逆行=発言156番、232番、243

71日、参議院 総務委員会 19号で集中審議、発言10番から

分権に逆行=発言115

 

参考:

・議案審議経過情報はこちら

・提出時の法案についてはこちら

・「地方独立行政法人法」(法律第118号)

 

しかし、地方が前につんのめって法人化に突き進み、議会もチェック機能を果たせず、当該機関の役割についての十分な検討も議論もなく、暴走状態で決定されてしまい、最後の砦として国の判断を待つしかないという状況では、国の強い関与を求めざるを得ません。

●大阪の法人化問題で、最も問題であると考えるのは、機関の使命の転換が意図されているところです。つまり公衆衛生の機関を、その技術を活かして産業支援の機関へと転換することが目論まれている点です。

 

これに関してはこちら

 

公衆衛生の機関を産業支援が中心の機関に転換することは、根拠のない憶断に過ぎないと思われる方もあるかもしれませんが、国の機関ではすでに提案されていることです。戦前から公衆衛生関連の試験研究機関であった国立健康・栄養研究所は、2001年に独立行政法人に移行しました。

 

国立健康・栄養研究所

 

戦前は、衛生行政は内務省で扱われていて、栄養研究所は1920年に内務省の研究所として創設されています  栄養研究所官制

 

その後2012年に閣議決定された「独立行政法人の制度及び組織の見直しの基本方針のなかで、医薬基盤研究所と統合して、研究開発型法人になることが提案されています。一旦法人化したあとは、他機関とのさらなる統合や役割転換が待っていたのです。同研究所は2013715日現在、ホームページ上では提案に沿ったような動きは確認できませんが、今後の動向が注目されるところです。ついでながら、独立行政法人の利点として、各機関の自主性が発揮できることが強調されますが、実際のところは法人化後も上からがんじがらめにされている様子がうかがえます。

 

国の機関はともかく、地方の公衆衛生行政の科学技術面の中核である試験機関が法人化されて産業指向の研究機関となり、主客転倒した付随的業務のなかで公衆衛生の機関としての役割が果たせるのか、大いに疑問です。法人化した影響はすぐには出ないでしょうが、しかし将来確実に、大阪における健康問題への取り組みにボディーブローとして効いてくると思います。そのとき責任を問われるのは、対応不十分だった組織なのでしょうか、あるいは担当していた個人なのでしょうか。問題の構造をつくることになった、法人化を推進した人たちが責任を問われることはないのでしょうか。

 


2013.7.28