地方衛生研究所の地独法認可に関して、総務省検討内容の問題点

「めざす会」との折衝で総務省は、大阪の独法化について十分検討して認可を決定するとしています。それには危機管理事例発生時に関連機関との連携が可能かどうかや、関係法令との照合を中心に検討されているようです。もちろんそれも重要だとは思います。しかし、危機管理時の連携の可否はともかく、後者の既にある法令・規則に関わる部分に地方衛生研究所の仕事を還元してしまってよいのかは、大きな疑問です。つまり、既に形としてあるものだけを基準に決めてよいのか、ということです。

 

健康に関わる問題に対応するための法令・規則や規制値は、科学的な知識や技術に基づいています。その知識・技術はどこからくるかといえば、地方衛生研究所の現場における日常活動や当該専門分野の研究からうみだされるものです。

 

地方衛生研究所の業務には、健康に関わるさまざまな問題について、その対応が法令化やマニュアル化される以前から、現場から問題を発掘して知識・技術を長年に渡って蓄積したり、あるいは規制値を設定するための、地味な実態調査を実施したりするものも含まれます。そうした日常活動があってこそ、問題に対応するための法令・規則、規制値などを決めることができるのです。法令や規制値などの対応策は、常に既に存在しているわけではなく、どこかで作成されたものをそっくり移植してくるのでもありません。

 

対応策のための基礎資料を作る過程において、地方衛生研究所の役割は非常に重要なのです。ところが総務省が検討するという内容は、この部分を視野の外に置いているのではないかと懸念されます。対応策は既に与えられているものと考えて、法令などの検討し易いところだけをみて、把握しにくいけれども重要な部分を検討対象から省いて、果たして検討したといえるのでしょうか。既存の法令等との整合性という、現行の枠組みの中だけをみていては、将来の対応を危うくするかもしれません。総務省における検討が、現実の公衆衛生行政とかけ離れたものにならないことを強く求めたいと思います。


 

2013.7.14