大阪パブコメ提出

 

 

法人化案は、公衆衛生とは異質のビジネスマインドに溢れた組織作りを狙い、研究機関としての「戦略的な投資」や「効率的な経営」が可能だとしている。しかし衛生研究所は、健康危機管理に対応する実践機関でもあるところに特徴があり、この役割が同組織を規定している。それは「戦略的な投資」や「効率的な経営」とは対極にある。一旦、大規模な健康危機管理事例がおきれば、そのようなキャッチフレーズは霧散する。大阪に関係のある大規模・広域・特殊な健康危機管理事例は、これまでも年を置かずに発生している。決して珍しいことではない。このような場合、法人の使命としての人々の健康保護をとるのか、あるいは組織の経営を優先するのか。企業経営ならコストを優先し事業の切り捨ても可能だが、それでは法人の使命を放棄することになり、また社会はそんなことを許さないだろう。ならば対応のために資金をつぎ込まねばならず、その結果経営危機を招いて、ついには行政が肩入れすることになる。結局は、直営に逆戻りすることになるだろう。

 

また、「選択と集中」で扱う分野を限定することが提案されているが、このような「戦略」は、健康危機管理に対応するに際して大きな誤りを犯すことになる。提案では、高い研究レベルが健康危機管理に即応できるとしている。しかしこれは、衛生研究所が過去実際にどのようにして健康危機に対応してきたかを全く無視したものである。危機対応には高い研究レベルだけで担保できるものではなく、経験を積んだ職員や長期にわたるデータの蓄積があってはじめて判断・対応ができる。健康を侵す原因はさまざまであり、それはいつ起きるか分からない。ある程度分野を広くとり、また長期間にわたるデータ収集があって、危機管理が可能となる。分野を限定する戦略は、健康危機管理には向かない組織づくりだといわざるをえない。

 

拙速な法人化ありきではなく、衛生研究所としてのあるべき姿について腰を据えて検討されることを切望する。

 


2012.9.11