ここでは大阪の法人化案が、そもそも本来の行革の趣旨に合っているのかどうかについて、検討したいと思います。
大阪府市統合本部のパブリックコメントに対する応答をみると、国の同様の業務を行っている機関は法人化されていないし、これまでに法人化を検討した自治体もあったものの法人化はされていない、という意見に対して、地方独立行政法人法では「試験研究を行うこと」はその対象業務となっているから、法人化は可能だという判断を示しています。
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しかし、本当にそうでしょうか。
確かに、2003年に成立した「地方独立行政法人法」では、第21条に対象となる業務として「試験研究」が挙げられています。
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ところが、これまで法人化された地方自治体の試験研究を業務とする機関は、農林水産や工業など産業分野の機関に限られています。
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大阪の「提案」は、府立公衆衛生研究所と環境科学研究所を公衆衛生の機関としてではなく、産業に資するバイオ分野の資源とみなしていることから、他の自治体で産業分野しか法人化されていない現状であっても、なんら矛盾を感じることがないのでしょう。つまり、公衆衛生の機関であることを無視しているからこそ、法人化する発想が生まれるのだといえます。
●さらに地方自治体の機関を法人化することになる以前、そもそも国の機関の法人化とはどういうものだったのでしょうか。
「独立行政法人」とは、1997年にだされた行政改革の出発点となる『行政改革会議最終報告』の「Ⅳ 行政機能の減量(アウトソーシング)、効率化等」で、その創設がうたわれたものです。
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この章のなかに「減量(アウトソーシング)の在り方」というものがあり、そのなかで「(2) 独立行政法人の創設」が提案されています。これをよく見ると、「③ 独立行政法人の対象業務と設立の考え方」のなかには、なんでもかんでも法人化すればよいのではなく、法人化から除外する業務が示されています。
それは、「(注)国が自ら主体となって直接実施しなければならない事務・事業」として、「災害等国の重大な危機管理に直結し、直接国の責任において実施することが必要な事務・事業」と記されているのです。
つまりこの「災害等」に、健康危機管理も相当すると考えられ、公衆衛生の試験機関は法人化の対象から除外されるべきものだといえます。実際に、国の公衆衛生関係の試験研究機関である、国立感染症研究所や国立医薬品食品衛生研究所は、国立のまま存続しています。ことが起きたときの現場の状況把握は、国立の研究所だけで行えるものではなく、国や地方自治体の各機関の連携により行われます。地方衛生研究所は、これら独立法人化されなかった国立の研究機関と業務を分担しているのです。
このように大阪の法人化案というものは、公衆衛生の機関であることを無視しているばかりでなく、行革の本来の趣旨にも反する提案だといわざるを得ません。
2013.2.5